2011年02月

2011年02月28日


「あ・うん」向田邦子■
20年ぶりくらいに読んだか。20年前はどんなことを思いながら読んでいたのだろうか。たぶん、ただ感動してたんだとおもう。でも今は、「あるわけない」と思いながら読んだ。が、ストーリーはともかく、やっぱりすごい。向田邦子はすごい。人間に対するまなざしが優しすぎる。描写が美しすぎる(テレビドラマの脚本家だけある)。熟女好き芸人のロバート秋山が、熟女のしぐさに「やさしいー」と言ってるのと、近い。…いつか、向田邦子全集を買おうと思う(文庫では全部持ってるのだが)。

「苦役列車」西村賢太■小説家とかミュージシャンとか、画家とかそういう、「表現すること」を職業としている人はどこまで自身をさらけだせるか、でその作品の訴える力ってのが違ってくるように思う。徹底的にさらけ出した西村賢太の小説は、だから説得力があって、おもしろい。(「どうで死ぬ身のひと踊り」も相当おもしろかったもんなあ。)とことん素っ裸な人間てのはどこか滑稽で、愛おしさすらおぼえる。「文藝春秋」で芥川賞受賞作を読むと何がいいって、読後、選考委員の選評がすぐ読めること。宮本輝のそれに、一番共感したかも。

「きことわ」朝吹真理子■家にいつのまにか文芸春秋がありまして。最初はするする読めた。貴子と永遠子の関係やお互いの想い出の地だとか、物語の地盤みたいなところまでは。…ちょっと後半飽きてしまった。風景は浮かぶし文章はきれい。でもそれだけ。それだけでも十分楽しめる小説はいくらでもあるけれど、たぶん、貴子と永遠子の魅力が伝わらなかったことが飽きの原因かも。「きことわ」の次ページから始まる同じく芥川賞受賞の「苦役列車」は最初の数行でひきこまれた。さすがこっちのが売れてるだけある。「どうで死ぬ身のひと踊り」も相当おもしろかったもんなあ。

「喋る馬」バーナード・マラマッド■ふだん、なかなか動かさない感情を揺さぶられたような。それがとても心地よくて。斬新な物語のなかに人間の可笑しさや優しさや時に悲惨さがかいま見えて。すばらしい短編集を読んでいるとき、たったひとりで黙々と読んでいるだけなのに、ものすごい幸せを感じる。やっぱこういうのを読んでしまうと、「KAGEROU」は……。比べては、決していけない。

「KAGEROU」齋藤智裕■「ブックオフで900円で売ってるってよ」「450円ずつ出して買うか」と相談してたママ友だちから「タダで手に入れたぜよ」とメールがきて(お友達がくれたらしい)、借りた。時間にしたら1時間半くらいで読み終えたのではないだろうか。読みやすいというか、簡素、というか。比喩の多用が気になった(よくいわれてるオヤジギャグより気になった)以外は、割とすんなり読めた感が。こんなんで賞とっていいのかな、と思うけど、いろいろひっくるめて、いいんだろう。

「おれのおばさん」佐川光晴■新聞広告に出てて、ちょっと気になってたら、翌日、職場近くの古本市で売ってて、購入。子どもたちが中学生になったら、勧めてみよう。大人が読むには少々浅い青春小説。

「流跡」朝吹真理子■配偶者の本棚にあった。あ、芥川賞とった人だ。と思って手にした。目にした。これは小説?散文詩?うた?意味不明のまま読み進め、あっと言う間に読んだ、ってことは、気に入らなかったわけじゃなさそうだけれど。なんだか奇麗なものが体に入っていった感触はあったけれど。賞とった作品も読んでみよう。いつか。



(23:59)

2011年02月08日

 1月29日、土曜日のことであった。

配偶者と「そろそろじゃないの」「そろそろだねえ」と会話を交わしながらPCをたちあげて、フォックスジャパンのサイトを確認。「今日からだ!」「どうしよう!」CSのチューナーがない。また契約しないと、ない。ママ友兼アメ友に急いで電話&メール。「アメリカンアイドルシーズン10、本日より。録画プリーーーズ!」土曜と日曜、2時間ずつを図々しくもお願いした。すると日曜朝と月曜朝にDVDがポストに。嗚呼。遠くの親戚より近くのママ友よ!ありがとう!

正直、サイモンがいないアメリカンアイドルはもういいかな、とも思っていた。しかし配偶者もママ&アメ友も「サイモンがいないアメリカンアイドルを観ることに意義がある」らしきことを論じ、なるほどなるほど、と初回のDVDを鑑賞した。やられた。しょっぱなからやられた。これぞテレビ。これぞエンターテインメント。新審査員発表シーン(これまた豪華な)から始まり、始まるぞ、始まるぞ、シーズン10が始まるぞ、とあおる映像が迫力と興奮でものすごいことになっていた。

新審査員のスティーブン・タイラーはまちゃあきみたいだし、ジェニファー・ロペスは化け物みたいに美しい。そして、審査はやっぱりおもしろいし、出場しているアメリカ人は底抜けに明るい。

しかし土曜分をあらかた見終えた数日後、日曜分を見たときに、ついに私はサイモンに思いをはせた。「こんなとき、サイモンならなんていうかな」「サイモンだったらこの人合格にしないだろうな」…配偶者が「シーズン9の決勝でも観るか」と言い、即座にうなずくと、我々は録画リストからひっぱってきた前シーズンのクリスタル・バワーソックスとリー・デワイズの決勝を観た。クリスタルのパフォーマンスに久々に号泣し、サイモンの最後のコメントでは苦しくて寂しくて胸がしめつけられた。iTunesでクリスタルとリーの先月出たアルバムを試聴した。

サイモンのいないアメリカンアイドル。でも懐かしがってばかりでは真のアメアイファンとはいえない。これから決勝まで、新たなる出発を遂げたアメアイシーズン10に、真摯に向き合いたいと思う。

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アメアイはこの子たちが寝てからのお楽しみ



(20:05)